長屋 売れない 理由|売却できない原因と対処法を解説
2026年5月11日
長屋を売りたいと思っても、なかなか買い手がつかないケースは珍しくありません。「古いから仕方ない」と諦める前に、売れない本当の理由を把握することが先決です。再建築不可・連棟構造・接道問題・権利関係など、長屋特有の条件が売却を困難にしている場合、原因を特定して適切な対処をとれば、売却の可能性は十分あります。この記事では、売主の視点で「なぜ売れないのか」「何を確認すればよいのか」「どの売り方が合っているのか」を実務的に解説します。長屋が売れないと言われる主な理由
長屋が市場で動きにくい背景には、構造・法規制・物理的な条件が複合的に絡んでいます。「築年数が古いから」という理由だけで片付けられないケースがほとんどで、実際には制度上の制約や権利関係が最大の障壁になっていることが多いです。まずは自分の物件がどの理由に当てはまるかを整理することから始めましょう。
長屋は「古いから売れない」のではなく、再建築不可や連棟構造などの条件が原因になることが多い。
再建築不可で住宅ローン利用者が限られる
再建築不可物件とは、現行の建築基準法が定める接道義務を満たしておらず、建物を取り壊した後に新たな建物を建てられない土地のことです。古い長屋には、幅員4m未満の路地にしか接していないものや、接道延長が2mに満たないものが多く、こうした物件は多くの金融機関で住宅ローンの融資対象外となります。
住宅ローンが使えないということは、購入者が現金一括で買える人に限られるということです。現金購入できる個人買主は母数が少なく、仲介市場に出しても問い合わせ自体が来にくくなります。長屋を売り出してもなかなか反応がない場合、この「融資不可」が根本原因になっていることが非常に多いです。
連棟構造で解体や建替えが自由にできない
長屋は壁を隣戸と共有している連棟構造が一般的です。自分の区画だけを独立して解体・建替えしようとすると、隣接する建物の構造に影響を与えるため、隣家の同意が必要になる場合があります。実際には全員の合意形成が難しく、解体工事そのものが進められないケースも珍しくありません。
購入を検討している人が「将来的にリフォームや建替えをしたい」と考えていても、連棟である以上、自由度が大きく制限されます。この制約が購入後のビジョンを描きにくくさせ、結果的に候補から外されることにつながります。
老朽化による修繕負担が大きい
築40年・50年を超える長屋では、屋根・外壁・基礎・配管などの老朽化が進んでいることが多く、購入後に相当の修繕費用がかかると判断されます。リフォームローンを活用できる場合もありますが、再建築不可であればそちらも制約を受けます。
内覧時に雨漏りの跡や床の傾き、腐食した柱などが目に入ると、買主の心理的なハードルは一気に上がります。修繕費の見積もりが取れていない状態では、買主側でリスクを過大評価しがちで、価格交渉も厳しくなる傾向があります。
隣家との距離が近く敬遠されやすい
長屋は隣戸との壁が接しているか、数十センチしか離れていない造りが一般的です。騒音・振動・日照・通風などの生活環境への懸念が、購入を躊躇させる要因になります。特に現代の住宅購入者は、プライバシーや静粛性を重視する傾向があり、構造上のメリットよりも生活上の不安が先行しやすいです。
売れにくい長屋に多い実務上の問題

売却活動を始めてから問題が発覚するケースが、長屋では特に多く見られます。接道・境界・登記・残置物といった実務的な課題は、売却の途中で契約が止まる原因になることもあります。事前に把握して対処しておくことで、後々のトラブルを大きく減らせます。
接道・境界・相続登記は、売却途中で発覚すると契約停止になることもあります。
接道義務を満たしていない
建築基準法では、建物の敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接することが求められています。古い長屋では、この接道要件を満たさないものが多く、役所の建築指導課に確認すると「再建築不可」と判明するケースがあります。この確認を売主側が怠ると、売買契約後に買主から告知義務違反を問われるリスクがあります。
売却前に役所で道路種別と接道状況を確認し、その結果を重要事項説明に正確に反映させることが不可欠です。
境界未確定や越境がある
古い長屋では、土地の境界が正式に確定されていないケースや、隣地の構造物や塀が越境しているケースが珍しくありません。境界が曖昧なまま売り出すと、買主が土地の範囲を確認できず、購入判断ができません。また、越境が発覚した場合は覚書の締結や工事協議が必要になり、手続きが複雑化します。
土地家屋調査士に依頼して境界確認を行い、可能であれば境界標の設置まで完了させておくと、売却交渉がスムーズになります。
相続登記が未了になっている
親や祖父母から引き継いだ長屋で、相続登記がされていない物件は売却できません。2024年4月から相続登記が義務化されましたが、それ以前から放置されていたケースは依然として多く存在します。複数の相続人がいる場合、全員の同意と署名・押印が必要になるため、手続きに時間がかかることもあります。
司法書士に相談して現在の登記状況を確認し、売却前に名義を整理しておくことが先決です。相続人の一人でも連絡が取れない場合は、手続きがさらに長期化するため早めの着手が必要です。
残置物や荷物が大量に残っている
長年使っていなかった長屋や、前の住人が退去後に片付けをしていない物件では、大量の残置物が残っていることがあります。残置物がある状態では内覧時の印象が大きく下がるだけでなく、処分費用の負担について売主・買主間で交渉が発生することもあります。
売却前に残置物を自力または業者を通じて撤去しておくことが理想ですが、費用負担が難しい場合は、残置物の状況を正確に開示した上で価格に反映させる方法もあります。
長屋が仲介で売れにくい理由

不動産会社に仲介を依頼したものの、なかなか売れないという状況は、長屋では頻繁に起こります。一般的な戸建てと同じ感覚で売り出しても、長屋固有の条件がネックになって成約に至らないケースが多いです。仲介が機能しにくい構造的な理由を理解しておくことで、次の打ち手を考えやすくなります。
一般市場で売却できるかは「融資利用が可能か」が重要な判断基準になります。
一般住宅より購入希望者が少ない
仲介市場では、多数の買主候補の中から条件が合う人を探すことで成約します。ところが長屋は、再建築不可・連棟・老朽化といった条件から、そもそも検討対象に入れる買主が少数に限られます。ポータルサイトに掲載しても問い合わせ件数が伸びないのは、需要側の母数の問題が大きいです。
金融機関の融資審査が厳しい
再建築不可の長屋は担保評価が低く、多くのメガバンクや地方銀行では融資を断られます。一部のノンバンクや信用金庫では対応していることもありますが、金利が高くなる傾向があり、買主にとっての購入コストが上がります。融資が使えない状況では、現金購入者か、投資目的の買主に絞られるため、売却が長期化しやすくなります。
内覧時に老朽化の印象が悪化しやすい
写真では伝わりにくい老朽化の状態も、実際に内覧すると一目で分かります。床のきしみ、天井のシミ、窓枠の歪みなどが積み重なると、買主の心理的な不安は高まります。内覧後に「やっぱり難しい」と断られるパターンが繰り返される場合、物件の状態そのものに問題がある可能性が高いです。最低限の清掃・整理を行い、気になる箇所は事前に補修するか、現状を正直に開示して価格に反映させることが誠実な対応です。
隣地所有者との関係性を懸念される
長屋では、将来的に隣家との解体協議や修繕協議が必要になる可能性があります。「隣の所有者がどんな人か分からない」「将来もめそう」という懸念が、購入をためらわせる理由になることがあります。隣家の状況や関係性について、把握している範囲で正直に情報提供することが、買主の不安を和らげることにつながります。
長屋を売却する前に確認すべきポイント

売り出す前に物件の状態を正確に把握しておくことが、長屋売却では特に重要です。後から問題が発覚すると、契約解除や損害賠償請求に発展するリスクがあります。売主として最低限確認しておくべき項目を整理しておきましょう。
売却前に役所調査・登記確認・境界確認を行うと、後のトラブルを減らしやすくなります。
再建築不可かどうかを調査する
市区町村の建築指導課に出向き、対象物件の道路種別・接道状況を確認します。「建築計画概要書」や「道路台帳」を閲覧することで、接道している道路が建築基準法上の道路かどうか、幅員はどれくらいかを把握できます。再建築不可であれば、その旨を売買契約の重要事項説明書に必ず明記する必要があります。把握していたにもかかわらず告知しなかった場合は、売主の責任が問われます。
単独所有か共有名義か確認する
登記事項証明書(登記簿謄本)を法務局で取得し、所有者が自分一人かどうかを確認します。共有名義の場合、全員の同意なしには売却できません。共有者の中に連絡の取れない人や、売却に反対している人がいると、手続きが止まってしまいます。共有者全員の意思確認と、売却に向けた合意形成を先に行っておくことが必要です。
増築や未登記部分の有無を確認する
建物の実際の形状と登記上の面積が一致していない「未登記部分」がある場合、売却時に問題になることがあります。特に長屋では増築を繰り返しているケースがあり、登記簿上の床面積と現況が大きく異なることもあります。現況測量や建物表題変更登記が必要になる場合があるため、土地家屋調査士に相談して確認しておくと安心です。
契約不適合責任のリスクを整理する
2020年の民法改正により、売主は「契約不適合責任」を負うことになりました。物件に雨漏り・シロアリ・給排水管の不具合などの問題があり、それを知りながら告知しなかった場合、買主から修補請求や損害賠償を求められる可能性があります。既存住宅状況調査(インスペクション)を活用して物件の状態を客観的に把握し、どこまで開示するかを整理しておくことが、売主としてのリスク管理になります。
長屋売却でよくあるトラブル

長屋の売却では、一般的な戸建てには起きにくいトラブルが発生することがあります。隣家との物理的・権利的な関係が深いため、問題が発覚したときの影響範囲が広くなりがちです。売却前に想定されるリスクを把握し、対応策を準備しておくことが重要です。
長屋は隣接建物との関係性が深く、単独戸建てよりトラブルが複雑化しやすい傾向があります。
雨漏りや傾きが後から発覚する
売却後に雨漏りや床の傾きが発覚し、買主から修補費用の請求を受けるトラブルは少なくありません。長屋は屋根や外壁が隣戸と連続しているため、自分の区画だけの問題ではなく、連棟全体に由来する不具合が隠れていることもあります。売却前にインスペクションを実施し、既知の不具合は開示した上で価格に反映させる対応が、後のトラブル防止に有効です。
隣家との境界認識が食い違う
長屋では、数十センチの土地の帰属について隣家との認識が異なるケースがあります。特に古い長屋では、過去の経緯や口頭での取り決めが文書化されていないことが多く、売却時に境界を巡る紛争に発展することがあります。境界確認を売却前に完了させておくことが、このリスクを回避する最善策です。
解体協議がまとまらない
連棟長屋の一部を解体して更地にしようとする場合、隣接する区画の所有者全員の合意が必要になることがあります。隣家が解体を拒否したり、連絡が取れなかったりすると、解体自体が実施できなくなります。買主が解体を前提に購入しようとしている場合、この問題が発覚した時点で交渉が白紙に戻るケースもあります。
売却後に設備不具合で揉める
給湯器・電気設備・排水管などの設備不具合が、引渡し後に表面化することがあります。特に長期間空き家だった長屋では、引渡し前の通水・通電確認を怠ると、実際に使い始めてから問題が発覚しやすいです。設備の動作確認を事前に行い、不具合がある場合は現状渡しとする旨を契約書に明記しておくことが重要です。
長屋は仲介と買取のどちらが向いているか

長屋の売却方法を選ぶ際は、「できるだけ高く売りたい」という希望と「確実に売りたい」という現実を、切り分けて考える必要があります。仲介と買取にはそれぞれ異なる特徴があり、物件の状態や売主の状況によって、どちらが適切かは変わります。
「高く売れる可能性」と「売却できる確実性」は別の判断軸で考える必要があります。
仲介が向いている長屋の特徴
建築基準法上の道路に適切に接道しており、住宅ローンが利用できる物件は、仲介市場での売却が現実的です。また、比較的築年数が浅く状態が良い、あるいはリノベーション済みで即入居できる状態であれば、一般の買主に訴求しやすくなります。隣家との権利関係が整理されていて、将来的なトラブルリスクが低い物件も、仲介に向いています。
買取を検討した方がよいケース
再建築不可・接道不足・境界未確定・相続登記未了など、複数の問題を抱えた長屋は、仲介市場では成約が難しいことが多いです。こうした場合、不動産買取業者への売却を検討する価値があります。買取は市場価格より低くなる傾向がありますが、現金で確実に、かつ短期間で売却できるメリットがあります。老朽化が激しく修繕費用がかさむ物件や、残置物処分の手間を省きたい場合にも、買取は有力な選択肢です。
価格以外で比較すべき判断軸
仲介と買取を比較する際、売却価格だけに目が向きがちですが、実際には時間・手間・リスクも重要な判断材料です。仲介では売却まで数ヶ月から1年以上かかることもあり、その間も固定資産税・管理費・光熱費が発生し続けます。また、売却が成立しなかった場合の精神的な負担も無視できません。買取は価格が下がっても、こうしたコストとリスクを解消できる点で、トータルの収支が仲介より良くなるケースもあります。
売却期間とリスクの違い
仲介では、売れるまでの期間に売主が契約不適合責任を負い続けます。長期化すればするほど、その間に新たな不具合が発生するリスクも高まります。買取の場合、多くの業者が「現状渡し・瑕疵担保免責」で引き取るため、売主の責任リスクを大幅に軽減できます。これは特に、物件の状態に不安がある売主にとって大きなメリットです。
長屋を売るか迷ったときの判断基準

「売った方がいいとは思っているが、踏み切れない」という状況は、長屋の所有者に多く見られます。しかし長屋は、保有し続けることでリスクが蓄積しやすい物件でもあります。維持コスト・老朽化・空き家リスクを数字で把握した上で、売却するかどうかを判断することが重要です。
長屋は放置期間が長いほど、老朽化・近隣問題・税負担で条件が悪化しやすくなります。
維持費と固定資産税を比較する
居住していない長屋であっても、固定資産税・都市計画税は毎年発生します。加えて、外壁や屋根の最低限の維持管理費用、火災保険料なども継続的にかかります。これらを年間コストとして計算し、売却した場合に得られる資金と比較すると、「売らずに持ち続けることのコスト」が明確になります。
修繕費用が将来どこまで必要か確認する
老朽化した長屋を賃貸に出したり、自己居住したりするためには、相当のリフォーム費用が必要になることがあります。屋根・外壁・水回り・電気設備など、主要部位を一通りリフォームすると数百万円規模になることもあります。修繕費用の概算を把握した上で、売却価格と比較することで、売却の優先度が判断しやすくなります。
空き家リスクを考慮する
空き家状態が続くと、管理不足による建物の急速な劣化、不審者の侵入、周辺への景観悪化などのリスクが高まります。行政から「特定空き家」に指定されると、固定資産税の住宅用地特例が外れて税負担が大幅に増加するケースもあります。放置によって物件の状態と条件が悪化し、将来的な売却がさらに困難になる可能性を念頭に置く必要があります。
相続人間で意見がまとまるか確認する
共有名義や相続案件では、売却の意思決定に複数人の合意が必要です。相続人の中に「売りたくない」「価格に納得できない」という人がいると、手続きが進みません。家族間での意見調整が難しい場合は、専門家(司法書士・弁護士)を間に入れることで、感情的な対立を避けながら合理的な結論を引き出しやすくなります。長屋の売却は物件の問題だけでなく、人間関係の問題でもあることを意識しておく必要があります。
長屋売却でよくある質問
古い長屋でも売却できますか
築年数が古いこと自体は、売却不可の絶対的な理由にはなりません。ただし、再建築不可・接道不足・老朽化による安全性の問題などが重なると、一般市場での売却は難しくなります。こうした場合でも、現状のまま買い取る不動産業者に相談することで売却できるケースがあります。まずは物件の状態と法的条件を整理した上で、仲介と買取の両方から見積もりを取ることをおすすめします。
再建築不可でも売れますか
再建築不可物件でも売却は可能です。ただし、住宅ローンが使えないため一般の個人買主には売りにくく、仲介ではかなり時間がかかることが多いです。再建築不可物件を専門に扱う買取業者や、賃貸経営目的で購入する投資家が主な買い手になります。価格は再建築可能な物件と比べて大幅に下がることが多いですが、売れないわけではありません。
隣家の同意は必要ですか
長屋の一区画を単独で売却する場合、隣家の同意は原則として必要ありません。ただし、売却後に買主が解体や大規模リフォームを行う場合は、連棟構造への影響から隣家との協議が必要になることがあります。また、越境物の覚書締結や共有設備の利用ルール確認など、隣家との事前調整が必要なケースはあります。売却前に隣家との関係を確認しておくと、買主への説明がスムーズになります。
残置物があっても売れますか
残置物がある状態でも売却は可能です。残置物を売主が処分した上で引き渡す方法と、現状のまま「残置物込み」で引き渡す方法の二つがあります。後者は価格が下がる可能性がありますが、処分費用や手間が節約できます。どちらが有利かは物件の状態や買主の意向によって異なるため、不動産業者に相談しながら対応方針を決めることをおすすめします。
この記事の要点まとめ
- 長屋が売れない原因は再建築不可や権利関係が多い
- 仲介で進みにくい場合は事前調査が重要
- 接道・登記・越境確認は売却前に必要
- 放置すると老朽化や税負担リスクが増える
- 仲介と買取はそれぞれ向き不向きがあり、価格以外の要素(時間・リスク・手間)で比較することが大切
- 共有名義・相続案件では全員の合意形成が売却の前提条件になる
- 売却前にインスペクションや役所調査を行うことで、契約不適合責任のリスクを軽減できる
