長屋の固定資産税負担が重いと感じたら|売却・保有の判断ポイント
2026年7月6日
長屋にお住まいの方、あるいは相続などで長屋を所有することになった方の中には、毎年届く固定資産税の納税通知書を見て、負担の重さに戸惑う方が少なくありません。特に大阪や京都、神戸など、住宅密集地に古い長屋や連棟住宅が多く残る地域では、建物が古くても評価額や税額がすぐにはゼロにならないことに驚かれるケースもよくあります。この記事では、長屋の固定資産税がなぜ負担に感じやすいのか、そのまま所有を続けるべきか、それとも整理を検討すべきかを判断するための材料を、実務上の傾向を踏まえて整理していきます。
長屋の固定資産税が負担に感じ始めたら最初に整理したいこと
長屋の固定資産税について「思っていたより高い」「毎年払い続けることに疑問を感じる」といったご相談は、実務の現場でも珍しくありません。ただし、固定資産税そのものだけを見て判断すると、状況を見誤ってしまうことがあります。まずは、負担に感じている原因が本当に税金だけなのか、それとも他の要素も重なっているのかを整理することから始めると、次の判断がしやすくなります。
固定資産税だけが問題なのか確認する
固定資産税の負担感は、税額そのものよりも「何のために払い続けているのか分からない」という心理的な要因から生まれることがあります。特に、居住していない長屋や、入居者がいても家賃収入が少ない物件の場合、税金だけが一方的に出ていく感覚が強くなりやすい傾向があります。まずは、直近数年分の納税通知書を確認し、税額そのものが上がっているのか、それとも他の維持費と合わせて負担感が増しているのかを切り分けて見ることが整理の第一歩になります。
固定資産税の金額だけでなく、修繕費・管理の手間・将来の見通しまで含めて年間の負担を洗い出すと、感覚的な「重さ」を具体的な数字として整理しやすくなります。
修繕費や空室も含めて年間負担を整理する
長屋や連棟住宅は建物の年数が経過しているケースが多く、固定資産税に加えて、屋根や外壁、給排水設備などの修繕費が発生しやすい点も特徴です。実務上は、固定資産税と修繕費、さらに空室期間中の管理費用までを合算して初めて、実際の年間負担が見えてくるというケースがよくあります。特に空室が続いている場合、家賃収入が途絶えているにもかかわらず税金や管理費だけが継続して発生するため、負担感がより強く感じられる傾向があります。
家族が将来引き継ぐ予定があるか考える
現在の所有者ご自身が納税を続けられる状況であっても、将来的にご家族が同じ長屋を引き継ぐことになった場合、同じように負担を感じる可能性があります。実務上、相続をきっかけに「親の代から所有していた長屋をどう扱うか」というご相談を受けることも多く、早い段階で今後の方針をご家族内で共有しておくと、後になって慌てて判断する事態を避けやすくなります。所有を続けるか整理するかは、現在の状況だけでなく、将来引き継ぐ方の負担も含めて考えることが大切です。
長屋の整理や売却判断については、
長屋・連棟住宅の売却で確認したいポイント
も参考になります。
固定資産税はなぜ毎年負担に感じやすくなるのか

長屋の固定資産税が負担に感じやすい背景には、建物の評価の仕組みや、空き家であっても課税が続くという制度上の特徴が関係しています。ここでは、所有者の方が誤解しやすいポイントを中心に整理します。
建物が古くても税金がゼロになるわけではない
「築年数が経っている建物だから固定資産税もほとんどかからないはず」と考えている方は少なくありませんが、実際には建物の評価額が下がっても、土地の評価額が大きな割合を占めているケースが多く、税額が大きく下がらないことがあります。特に住宅密集地にある長屋の場合、敷地面積が小さくても立地条件によって土地の評価が一定水準を保つことがあり、建物の老朽化だけで税負担が軽くなるとは限らない点に注意が必要です。
空き家になっても固定資産税は発生する
入居者が退去し、長期間空き家の状態が続いていても、固定資産税の納税義務がなくなるわけではありません。むしろ、居住用として利用されていない状態が続くと、住宅用地に対する特例の適用要件から外れる可能性があり、結果として税額が増えるケースもあります。空き家であることを理由に「そのうち税金も下がるだろう」と様子を見ているうちに、負担が想定以上に続いてしまうという相談も実務上よく見られます。
修繕費との二重負担になりやすい理由
固定資産税は毎年決まった時期に発生する固定費である一方、修繕費は雨漏りや設備の故障など、突発的なタイミングで発生することが多い費用です。この二つが重なると、年間を通じて「税金は払い続けているのに、さらに修繕費もかかる」という二重の負担感につながりやすくなります。特に連棟住宅の場合、隣接する建物との構造上の関係から、単独での修繕が難しく、費用や工事の進め方について判断に迷うケースも少なくありません。
固定資産税は毎年発生する固定費であるため、単年の金額だけでなく、今後数年単位でどの程度の負担が続くのかという視点で捉えると、状況を整理しやすくなります。
固定資産税を払い続けるか整理するか迷ったときの考え方

固定資産税を含めた維持費をこのまま払い続けるべきか、それとも売却などの形で整理を検討すべきか。この判断には、正解が一つだけあるわけではなく、所有者ごとの状況によって考え方が変わります。ここでは、判断材料として押さえておきたい視点を整理します。
家賃収入で維持費をまかなえているか
長屋を賃貸に出している場合、家賃収入によって固定資産税や修繕費をまかなえているかどうかは、一つの重要な判断材料になります。実務上は、家賃収入が維持費を上回っている間は所有を継続する意向を持たれる方が多い一方、空室が続いたり、家賃水準が周辺相場と比べて低くなってきたりすると、収支のバランスが崩れ、整理を検討し始めるきっかけになるケースが見られます。現状の収支を一度数字として書き出してみることが、判断の出発点になります。
相続予定がある場合は早めに整理した方がよいケース
将来的にご家族が相続することが想定されている長屋の場合、所有者ご本人の代で状況をある程度整理しておくと、相続される方の負担を軽くできる可能性があります。特に、権利関係が複雑な連棟住宅や、相続登記が済んでいない不動産は、時間が経つほど関係者が増え、手続きが煩雑になりやすい傾向があります。相続登記の義務化が進んでいる背景もあり、早い段階で現状を確認しておくことは、ご家族にとっても意味のある準備になります。
売却以外の方法も含めて比較する
固定資産税の負担が重いと感じたとき、選択肢は売却だけとは限りません。賃貸として継続する、部分的な修繕を行いながら様子を見る、家族間で今後の方針を話し合うなど、複数の方向性を比較したうえで判断することが望ましいといえます。実務上は、まず現状を整理し、仲介での売却が向いているのか、買取という形で進め方を整理する方が合っているのかを、物件の状態や所有者の希望に応じて検討していくケースが多く見られます。
判断を急ぐ必要はありませんが、固定資産税の負担が続く限り状況は変化し続けます。定期的に現状を見直す機会を持つことが、後悔の少ない判断につながります。
長屋の状態によって価格や進め方に影響しやすいポイント

長屋や連棟住宅は、一般的な戸建てとは異なる特性を持つため、価格や売却の進め方に影響する要素がいくつかあります。ここでは、実務上よく確認されるポイントを整理します。
再建築できるかどうか
長屋が建つ土地の中には、接道条件などの理由から再建築が難しいとされる敷地も存在します。ただし、再建築ができないからといって、必ずしも売却自体が難しくなるとは限りません。買取業者側は、再建築の可否を確認したうえで、活用方法や再販売の見通しを踏まえて価格や進め方を検討する傾向があります。まずは、ご自身の物件がどのような接道状況にあるのかを確認しておくと、その後の相談がスムーズになります。
連棟住宅ならではの権利関係
長屋は複数の住戸が壁を共有する構造になっていることが多く、隣接する住戸の所有者との権利関係が売却の進め方に影響することがあります。例えば、建物の一部が越境している場合や、共有部分の扱いが明確でない場合、買取業者側は権利関係を確認したうえで進め方を検討します。こうした点は、一般的な戸建てにはない長屋特有の論点であり、早めに把握しておくことが望ましいといえます。
老朽化や空室が査定にどう影響するか
建物の老朽化や空室の有無は、価格に影響しやすい要素の一つです。ただし、老朽化しているから売れない、空室があるから査定が下がる、と一概に決めつけられるものではありません。買取業者側は、修繕にかかる費用や、再販売時に見込まれる需要などを踏まえて総合的に判断する傾向があります。老朽化や空室があるという理由だけで相談をためらう必要はなく、まずは現状を伝えたうえで、どのような進め方が考えられるかを確認することができます。
契約前に確認しておきたい事項
売却を進める際には、境界の確認、越境の有無、残置物の扱い、入居者がいる場合の契約状況など、契約前に整理しておくべき事項がいくつかあります。これらは物件によって内容が異なるため、一概に「これだけ確認すればよい」とは言えませんが、事前に整理しておくことで、契約後のトラブルを避けやすくなります。不明な点がある場合は、契約を進める前に確認しておくことをおすすめします。
老朽化や空室、権利関係の複雑さは、価格や進め方に影響しやすい要素ではありますが、それだけで「売れない」と判断されるものではありません。まずは現状を整理し、どのような選択肢があるかを確認することが大切です。
長屋の条件によって売却方法は変わるため、
長屋・連棟住宅の基本的な判断材料
もあわせて確認しておくと整理しやすくなります。
近年は固定資産税以外の維持コストも判断材料になっている

長屋の所有について考える際、固定資産税だけでなく、近年の社会的な背景も判断材料の一つになっています。ここでは、最近の実務変化について整理します。
建築費・修繕費の上昇
近年は建築資材や人件費の上昇により、修繕やリフォームにかかる費用が以前より高くなる傾向が見られます。長屋のような古い建物では、屋根や設備の修繕が必要になる場面も多く、固定資産税に加えてこうした費用の上昇が重なることで、維持していくこと自体の負担感が増しているというお声を伺うことも増えています。
空き家管理への意識が高まっている
空き家を放置することによるリスクについて、社会的な関心が高まっていることも背景の一つです。管理が行き届かない空き家は、近隣とのトラブルや老朽化の進行につながる可能性があるため、所有者としての管理責任を意識される方が増えています。長屋の場合、隣接する住戸への影響も考慮する必要があり、単独で所有する戸建てとは異なる配慮が求められる場合があります。
相続登記義務化で整理相談が増えている
相続登記の義務化が進んだことを背景に、これまで手続きを後回しにしていた不動産について、改めて整理を検討される方からのご相談が増えている印象があります。長屋や連棟住宅は権利関係が複雑になりやすいため、相続が発生してから慌てて対応するよりも、早めに現状を確認しておくことが望ましいといえます。
今の状態でも相談できるのか不安な所有者へ

「空室があるまま相談してもよいのか」「入居者がいる状態でも進められるのか」といった不安から、相談自体をためらってしまう所有者の方も少なくありません。ここでは、実際によくいただくご不安について整理します。
空室があっても相談できる
空室がある状態でも、相談自体は可能です。実務上、満室の状態で相談に来られる方ばかりではなく、むしろ空室が続いていることをきっかけにご相談いただくケースの方が多いといえます。空室があることで価格や進め方に影響する要素はありますが、それを理由に相談を先延ばしにする必要はありません。
入居者がいても相談できる
入居者がいる状態のままでも相談することができます。買取業者側は、賃貸中の物件についても、契約状況や賃料の状況を踏まえて進め方を検討する傾向があります。入居者への対応や退去のタイミングについては、物件ごとに事情が異なるため、まずは現状をお伝えいただくところから整理を始めることができます。
解体前に確認しておきたいこと
老朽化が進んでいる場合、「解体してから売却した方がよいのでは」と考える方もいらっしゃいますが、先に解体を進めることで、かえって費用負担が増えてしまうケースもあります。連棟住宅の場合、隣接する建物との構造上の関係から、解体自体が単純ではないこともあります。解体を検討する前に、現状のまま相談できるかどうかを確認しておくことをおすすめします。
仲介と買取はどちらが向いているか比較する
売却の進め方には、仲介による売却と、買取業者による買取という二つの方向性があります。仲介は、時間をかけてより高い価格での売却を目指せる可能性がある一方、権利関係が複雑な物件や、老朽化が進んでいる物件では買主が見つかりにくく、時間がかかる場合があります。買取は、こうした事情がある物件でも進め方を整理しやすいという特徴がありますが、価格面での考え方が仲介とは異なります。どちらが向いているかは、物件の状態や所有者の希望によって変わるため、状況を踏まえて比較することが大切です。
空室、入居者の有無、老朽化の程度にかかわらず、まずは現状を整理して相談することができます。相談したからといって、すぐに売却を決める必要はありません。
長屋の固定資産税でよくある質問
固定資産税は毎年上がりますか
固定資産税は、評価替えや特例の適用状況によって変動することがあり、毎年一律に上がるとは限りません。ただし、住宅用地の特例が適用されなくなった場合など、状況によっては税額が増えるケースもあるため、毎年の納税通知書を確認しておくことが大切です。
空き家でも税金はかかりますか
空き家であっても、所有している限り固定資産税は発生します。居住実態がないことを理由に税額が下がるわけではなく、むしろ特例の適用要件から外れることで税額が増える場合もあるため注意が必要です。
相続しただけでも納税義務がありますか
相続によって不動産を取得した場合、相続人には納税義務が生じます。相続登記が済んでいない状態であっても、実質的な所有者として納税を求められるケースがあるため、早めに状況を確認しておくことが望ましいといえます。
売却したら翌年の税金はどうなりますか
不動産を売却した場合、固定資産税の納税義務者はその年の1月1日時点の所有者を基準に判断されるのが一般的です。そのため、売却のタイミングによっては、その年の税金は売主側が負担し、翌年以降は新しい所有者が負担することになります。具体的な精算方法は契約内容によって異なるため、契約時に確認しておくことをおすすめします。
この記事の要点
- 長屋の固定資産税は、建物が古くても土地の評価によって税額が大きく下がらないことがあります。
- 空き家であっても固定資産税は発生し、特例の適用状況によっては税額が増える場合があります。
- 固定資産税に加えて修繕費や空室による収支悪化が重なると、負担感が強くなりやすい傾向があります。
- 相続予定がある場合は、権利関係が複雑になる前に早めに現状を整理しておくことが望ましいといえます。
- 老朽化や空室、権利関係の複雑さがあっても、それだけで売却できないと決めつける必要はなく、まずは現状を整理して相談することができます。
