収益物件の利回り低下と売却判断|大阪の不動産整理ガイド

2026年5月19日

収益が低い古いビル

収益物件の利回りが低下すると何が起きるのか

収益物件を保有しているオーナーにとって、利回りの低下は「じわじわと進む問題」として現れることが多いです。家賃が少し下がった、空室が1室増えた、修繕費が出た——それぞれは小さな変化でも、重なると実質的な収益がほとんど残らなくなるケースがあります。このセクションでは、利回り低下がどのような形で収支を圧迫していくのかを、実務上の視点から整理します。

表面利回りだけでは実態を判断できない

物件の広告に記載されている「利回り〇%」は、多くの場合、満室を前提とした表面利回りです。この数字と実際のキャッシュフローは、大きくかけ離れていることがあります。たとえば、表面利回り8%と記載されていても、空室が2割あれば実質的な家賃収入は満室時の8割にとどまります。そこから管理費・修繕積立金・固定資産税・火災保険料などを差し引くと、手元に残る収益はかなり限定的になります。実務上は、ネット利回り(実質利回り)で比較することが収支判断の基本とされていますが、物件購入時にこの視点が欠けていたケースは少なくありません。

【チェックポイント】表面利回りからネット利回りへの換算には、年間の管理費・税金・修繕費・保険料・空室損失を差し引く必要があります。これらが年間家賃収入の20〜30%に達するケースも珍しくありません。

修繕費と空室率で利益が消えるケース

築10〜20年を超えると、外壁・屋根・給排水設備・エレベーター(対象物件の場合)など、まとまった修繕が必要になる時期が重なりやすくなります。1回の大規模修繕で数百万円の支出が生じると、その年の家賃収入の大半が修繕費に消えることもあります。さらに、空室が慢性化している物件では、リフォーム費用を投じても入居が決まらないという状況に陥ることがあります。「修繕しても入居率が改善しない」「空室期間が以前より長くなってきた」というサインは、物件の競争力低下を示している可能性があるため、早めに状況を整理することが望ましいです。

家賃下落が続く物件の特徴

家賃が下落する要因は、物件の老朽化だけではありません。エリア全体での人口減少、周辺への新築供給の増加、設備水準の相対的な低下(Wi-Fi・宅配ボックス・オートロックの有無など)が複合的に影響します。特に地方都市では、需要の絶対数が減少しているエリアもあり、家賃を下げても空室が埋まらないという状況が発生しやすい傾向があります。現在の家賃水準が購入時より下がっている場合は、その傾向が今後も続くのかどうかを確認することが、判断材料のひとつになります。

融資返済とキャッシュフロー悪化の関係

収益物件を融資で取得している場合、毎月の返済額は固定費として発生し続けます。家賃収入が安定していれば問題ありませんが、空室が増えたり家賃が下落したりすると、返済後のキャッシュフローが赤字に転じるケースがあります。「デット・サービス・カバレッジ・レシオ(DSCR)」と呼ばれる返済カバー率が1を下回る状態が続くと、手出しで返済を続けることになり、保有コストの負担が重くなります。売却を検討する前提として、まず借入条件・残債・残存年数を整理した上で、現在の収支がどの水準にあるかを把握しておくことが重要です。

買主側が「低利回り物件」を敬遠する理由

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利回りが低い物件は、売主にとって「売りにくい」と感じやすい資産です。ただ、買主が敬遠する理由は単純に「利回りが低いから」ではなく、将来の収益性に対する不透明感や、物件固有のリスクを織り込んでいることがほとんどです。売却を検討する際には、買主の視点を理解しておくことが、価格設定や売却方針を立てる上での助けになります。

投資家が重視するのは将来の出口

収益物件への投資家は、入口(購入価格・利回り)と同時に出口(将来の売却可能性・売却価格)を意識します。現在の利回りが低い物件は、将来の転売でも同様に低い評価になりやすく、「出口が見えにくい」と判断されることがあります。特に、築年数が経過するにつれて融資が付きにくくなる物件では、買主が限定されやすく、結果として流通しにくくなる傾向があります。

築古物件は修繕リスクを見られやすい

築年数が相応に経過している物件では、買主側が「購入後にどの程度の修繕費が必要か」を慎重に精査します。修繕履歴が整理されていない場合、「何が残っているかわからない」としてリスク割引が大きくなる傾向があります。屋根・外壁・給排水・電気系統など主要部位の修繕状況を書類で示せるかどうかが、買主の判断に影響することがあります。

【注意】修繕履歴の書類が存在しない場合でも、管理会社への確認や過去の請求書・工事報告書などから一定の情報が得られることがあります。整理できる範囲でまとめておくことが望ましいです。

再建築不可や接道問題が収益性に影響する

再建築不可物件や、接道条件(幅員・接道長・私道の権利関係など)に問題がある物件は、将来の建替えが困難なため、収益物件としての評価が抑えられやすい傾向があります。投資家は「現状の収益」と「将来の選択肢の広さ」を総合的に評価するため、法的・物理的な制約が多い物件は、価格交渉で大きく調整されるケースがあります。

地方と都市部で査定基準が変わる理由

同じ利回りの物件でも、立地によって市場の評価は異なります。大阪市内の主要エリアと郊外・地方エリアでは、融資の付きやすさ・投資家の数・将来の賃貸需要の見通しが大きく違います。地方ほど「利回りが高くないと検討されない」という傾向があり、一方で都市部では多少利回りが低くても、希少性や立地で評価されるケースもあります。エリアごとの市場実態を踏まえた価格設定が、売却活動の出発点として重要になります。

収益性が低い物件の整理や売却判断については、収益性が低い物件に関するページでも実務的な視点からまとめています。状況の整理にあわせてご参照ください。

保有継続と売却判断を分ける実務ポイント

収益性が低い物件修繕

「売るべきか、持ち続けるべきか」は、多くのオーナーが悩む問いです。この判断には、現在の収支状況だけでなく、今後の修繕見通し・借入条件・エリアの需給・オーナー自身のライフプランなど、複数の要素を整理する必要があります。一般論ではなく、個別の物件・状況に応じた判断材料を確認していくことが、実務上の対応として重要です。

修繕で改善できる物件かを見極める

空室や収益低下の原因が、設備の古さ・内装の劣化・管理状態の悪さなど「修繕で対応できる範囲」にある場合は、一定の費用対効果が見込めることがあります。たとえば、キッチンや浴室を刷新することで家賃を維持しやすくなるケースや、外壁塗装で建物の印象を改善して入居希望者が増えるケースもあります。ただし、修繕コストが回収できるかどうかは、残存する賃貸期間・エリアの需要・競合物件の水準によって異なるため、修繕前に費用対効果を試算しておくことが実務的な手順です。

空室改善より売却が向くケース

状況によっては、空室改善を試みるより先に売却を検討した方が合理的なケースがあります。具体的には、①エリアの人口・世帯数が減少傾向にある、②修繕費が回収期間内に回収できない水準になっている、③融資の返済が重く手出しが続いている、④オーナーの管理負担が大きくなっている、⑤相続・資産整理などの事情で早期に現金化が必要——こうした条件が重なる場合は、保有を続けるコストと売却損失を比較した上で判断することが重要です。

【判断基準の目安】「このまま5年保有した場合のキャッシュフロー合計」と「現在売却した場合の手取り」を比較することが、売却判断の基本的な検討軸のひとつです。税金・借入残債・修繕見込み額も含めて試算することをお勧めします(税務・法務については専門家への確認が必要です)。

赤字化前に動くべきサイン

物件の収益が赤字に転じた後では、売却価格の交渉力が低下しやすくなる傾向があります。そのため、「まだ黒字だから大丈夫」と感じている時期に、売却の選択肢を並行して検討しておくことが、結果的に条件の良い売却につながりやすいとされています。空室率が上昇傾向にある、家賃の下落が続いている、大規模修繕の時期が近づいている——こうした変化が重なり始めたタイミングで、一度収支を整理する機会を設けることが実務的な対応です。

借入残債と売却価格を整理する

融資付きで保有している物件を売却する場合、売却代金から借入残債を一括返済する必要があります。「売却価格 ≧ 残債 + 諸費用」であれば手元に残るものがありますが、残債が売却価格を上回る「オーバーローン」状態では、売却時に手出しが生じます。ただ、この場合でも毎年の手出しを続けるケースと比較して、どちらが合理的かを検討することが重要です。残債の正確な金額は、金融機関への照会で確認できます。

最近の収益物件市場で起きている変化

建築

2024〜2025年にかけて、収益物件を取り巻く市場環境はいくつかの点で変化しています。金利・建築費・融資審査・投資家の購入基準——これらの変化は、売却価格や売却期間に影響を与えることがあります。「以前の感覚で売り出したら動かなかった」というケースも現場では見られるようになっており、現在の市場感を把握しておくことが、売却方針を立てる上での前提になります。

金利上昇で収益物件査定が変わり始めている

日本銀行の金融政策の変化を受けて、住宅ローンだけでなく収益物件向けの融資金利にも変動が生じています。融資金利が上昇すると、同じ物件でも買主の返済負担が増えるため、求める利回り水準が上がる傾向があります。その結果として売却価格の水準にも影響が出ることがあり、「以前の相場で売れると思っていたら査定額が下がっていた」というケースも見られます。現在の金利環境を踏まえた価格感の確認が、売却前の重要なステップになっています。

建築費高騰で築古物件の再生判断が厳しくなっている

資材費・人件費の上昇により、建替えや大規模リノベーションのコストが数年前より大幅に増加しています。そのため、「買って建て替えて収益化する」という再生型の購入が難しくなっており、築古物件に対して厳しい目線での査定が増えている傾向があります。一方で、解体・更地化しての土地売却を選択するオーナーも増えており、物件の状況によっては土地としての価値を中心に検討することも現実的な選択肢になっています。

投資家の購入基準が以前より厳格化している

金融機関の融資審査が全体的に厳格化していることもあり、以前は買い手がついていた物件でも、現在は審査が通りにくくなるケースがあります。特に、築年数が長い木造物件・耐震性に懸念がある物件・担保評価が低いエリアの物件などは、融資対象として認められにくくなる傾向があります。買主候補の幅が狭まることで売却期間が長くなる可能性もあるため、売却活動の開始前にこの点を見越した計画を立てておくことが望ましいです。

管理状態が悪い物件は流通停滞しやすい

共用部の清掃状態・外構の荒れ・入居者トラブルの有無・管理会社との連携状況——こうした管理面の実態は、内覧や資料確認の段階で買主に把握されます。管理状態が悪い印象を与えると、交渉段階で大幅な価格調整を求められたり、途中でキャンセルされたりするリスクがあります。売却前に対処できることは対処しておくことが、円滑な取引につながりやすい傾向があります。

【補足】管理会社の変更・共用部の清掃・外壁の簡易補修など、比較的低コストで対応できる改善策もあります。売却準備の一環として、買主の目線で物件を確認することをお勧めします。

仲介で進みにくい収益物件の特徴

収益データ

収益物件の売却は、居住用物件と比べて取引の複雑さが増すケースがあります。仲介による売却を進めようとしても途中で停滞したり、条件交渉が長期化したりする物件には、いくつかの共通した特徴が見られます。事前に把握しておくことで、適切な売却方法を選ぶ判断材料になります。

レントロールと現況が一致していない

レントロール(賃貸状況一覧)に記載されている家賃・入居者数・契約内容と、実際の現況が食い違っているケースは、買主の信頼を大きく損なうことがあります。「満室と記載されているのに実際は一部空室」「家賃が実態より高く記載されている」といった状態は、デューデリジェンス(物件調査)の段階で発覚しやすく、取引が中断する原因になることがあります。資料と現況の一致を事前に確認しておくことが、仲介を円滑に進める上での前提です。

滞納やトラブル入居者がいるケース

現入居者に家賃滞納が発生している場合、買主はその回収リスクを引き継ぐことになります。滞納期間が長い場合や、入居者との間で何らかのトラブルが生じている場合は、仲介での売却が難しくなることがあります。こうした状況では、問題を抱えたまま仲介で売り出すより、買取業者への売却や問題解消後の売却を検討する方が、現実的なケースがあります。

契約不適合責任を嫌がられる理由

仲介による売却では、売主は一定期間、契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)を負うのが原則です。収益物件の場合、雨漏り・給排水の不具合・シロアリ被害など、建物の瑕疵が後から発覚するリスクがあります。買主、特に個人投資家はこのリスクを嫌がることが多く、「責任免除」の特約を巡る交渉が生じることがあります。契約不適合責任の範囲については法律的な確認が必要なため、不動産会社や専門家と事前に整理しておくことをお勧めします。

【リスク説明】売主が個人の場合でも、業者向けに売却する場合でも、契約不適合責任の有無・範囲・期間は契約書の記載内容によって異なります。内容を十分に確認した上で売却条件を整理することが重要です。

資料不足で買主判断が止まるケース

収益物件の購入を検討する投資家は、物件資料を詳細に精査します。固定資産税納税通知書・登記簿謄本・建物図面・修繕履歴・管理会社との契約書・レントロール・過去の収支実績など、必要な書類が揃っていない場合、買主の判断が止まることがあります。書類の一部が紛失している場合でも、管理会社・市区町村・法務局などから再取得できるものもあるため、早めに確認しておくことが望ましいです。

収益物件の売却前に整理しておくべきこと

レントロール資料

売却活動を始める前に、物件に関する情報を整理しておくことで、交渉の遅延や取引の中断リスクを減らすことができます。「何を確認しておけばよいか」を把握しておくだけで、売却までの時間と手間を抑えることにつながります。

修繕履歴と管理資料をまとめる

過去にどこを、いつ、どの業者に、いくらで修繕したかの履歴は、買主の判断に直接影響します。書類として残っていない場合でも、管理会社や過去に依頼した工事業者に問い合わせることで、ある程度の情報が集まることがあります。管理委託契約書・管理報告書・入居者リスト・保険証券なども合わせて準備しておくと、売却活動がスムーズになりやすいです。

境界・越境・共有部分を確認する

土地の境界が確定していない場合、売却時に境界確認の手続きが必要になることがあります。隣地との境界が曖昧な状態のまま売り出すと交渉が長引く原因になりやすく、建物の一部が隣地に越境している・隣地の建物が敷地に越境しているケースも、事前確認が必要です。また、共有名義の場合は共有者全員の同意が原則として必要になるため、早めに関係者と調整しておくことをお勧めします。

相続や登記未整理は早めに確認する

物件が相続された場合、相続登記が完了していないと売却手続きが進められないことがあります。2024年4月から相続登記が義務化されたこともあり、未了の場合は早急に対応が必要です。そのほか、抵当権の抹消が済んでいない・旧名義のままになっているなどの登記上の問題も、事前に法務局や司法書士に確認して整理しておくことが望ましいです。

残置物や設備不良の扱いを決める

空室になった部屋に前入居者の残置物が残っている場合、処分費用と責任の扱いを明確にしておく必要があります。エアコン・給湯器・照明などの設備に不具合がある場合も、「現況渡し」とするか「補修してから引渡すか」を事前に決めておくことで、交渉時の混乱を避けやすくなります。設備の状態は、内覧前に一通り確認しておくことをお勧めします。

【売却前チェックポイント】①登記情報の確認(名義・抵当権・相続登記)②レントロールと現況の一致確認③修繕履歴・管理書類の整理④境界・越境の確認⑤設備不具合・残置物の把握⑥固定資産税・借入残債の確認——この6点を整理しておくと、売却活動に入ってからの対応がスムーズになりやすいです。

収益性が低い物件の整理ポイントについては、こちらの収益物件ページも参考になります。売却前の整理と併せて確認していただくと、判断の整理に役立ちます。

収益物件の売却でよくある質問

収益の対しての質問

利回りが低いと売却できませんか

利回りが低いだけで売却できないわけではありません。ただし、投資家を主な買主ターゲットとする場合、利回りが低いと価格調整を求められるか、買主の母数が減るケースはあります。一方で、実需(自己使用・事務所利用・土地取得目的)での購入を検討する買主にとっては、利回りよりも立地・価格・法的条件を重視することがあります。物件の特性に応じて買主層を想定した売却方針を立てることが、売却成立への近道になります。

空室が多くても売却できますか

空室が多い状態での売却は可能です。ただし、仲介では買主が想定するリスクが大きくなるため、価格交渉で調整が入ることが一般的です。空室状態の物件を「収益物件」として売るより、「土地・建物」として評価してもらう方が合理的なケースもあります。また、買取業者への売却であれば、空室が多い状態や管理が行き届いていない状態でも引き取ってもらえるケースがあります。

赤字物件でも仲介できますか

仲介での売却自体は赤字物件でも可能です。ただし、収支が赤字であることは買主の判断に影響するため、価格設定の難易度は上がります。また、赤字の原因が一時的なもの(大規模修繕直後など)か、構造的なもの(需要減少・家賃下落傾向)かによっても、買主の受け止め方は変わります。状況によっては仲介より買取の方が時間・手間の面で合理的なこともあるため、不動産会社に現況を正確に伝えた上で、複数の選択肢を比較することをお勧めします。

築古アパートは解体した方がいいですか

解体が有利かどうかは、物件の状態・エリアの地価・解体費用・残入居者の有無・税務上の影響など、複数の要素によって異なります。更地にすることで固定資産税の軽減措置(住宅用地の特例)が受けられなくなる点も考慮が必要です。一方で、建物の状態が著しく悪い場合や、土地としての需要が高いエリアでは、解体後の方が売却しやすくなるケースもあります。解体の判断は税務・法務面も含めて専門家と確認した上で進めることをお勧めします。

この記事の要点

  • 収益物件は表面利回りだけで判断できない——修繕費・管理費・空室損失を引いたネット利回りで実態を把握することが重要
  • 修繕費や空室率で実質収益が大きく変わる——特に築年数が経過した物件は一時的な修繕コストが収益を圧迫しやすい
  • 近年は金利上昇・建築費高騰・融資厳格化により、収益物件の買主基準が変化している
  • 赤字化前の売却判断が重要になるケースがある——空室率上昇・家賃下落・大規模修繕時期が重なるタイミングは特に検討の機会になりやすい
  • 売却前は管理資料・修繕履歴・登記・境界・設備状態の確認が売却活動を円滑にする
  • 仲介が難しいケースでは、買取の選択肢も含めて複数の方法を比較することが実務的な対応

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