収益物件 維持費 高い|保有を続けるべきか売却すべきか判断基準を解説

2026年6月2日

収益とコストの話

維持費が収益を圧迫し始めるタイミングとは

収益物件を保有していると、購入当初は問題なかった収支が、ある時期を境に徐々に悪化していくケースがあります。家賃収入自体は変わっていないにもかかわらず、手元に残る金額が減っている場合、多くは「支出の増加」が原因です。特に築年数が経過した物件では、複数の費用が同時に増える局面が生じやすく、気づいたときには実質的な収益がほとんど出ていない、というケースも珍しくありません。維持費が収益を圧迫し始めるタイミングは物件によって異なりますが、いくつかの典型的なパターンを把握しておくことが判断の第一歩になります。

固定資産税と都市計画税の負担

固定資産税と都市計画税は、物件を保有している限り毎年発生する固定費です。税額は路線価や固定資産税評価額をもとに算出されるため、地価が高いエリアや、評価額の見直しが行われた後に税負担が重くなることがあります。購入時の収支計画にこれらを正確に組み込んでいなかった場合、実態として毎年数十万円単位の支出が発生しているにもかかわらず、意識されにくい費用として見落とされているケースがあります。特に複数棟を保有しているオーナーの場合、物件ごとの税額を把握せずに全体収支を見ているため、気づきにくくなる傾向があります。

修繕費が想定以上に増えるケース

修繕費は、築年数が経過するにつれて発生頻度と金額の両方が増える傾向があります。設備の老朽化による突発的な修繕(給湯器の交換、配管の詰まり・漏水など)は、事前に計画できないため、月々の収支に大きなブレを生じさせます。また、入居者の退去に伴う原状回復費用も、築年数が古い物件ほど費用が膨らみやすい傾向があります。「1室あたりの修繕費が想定の2〜3倍になっていた」という声は、実務上でも珍しくありません。修繕積立をしていたとしても、取り崩しが続いていれば、収益を圧迫する構造に変わりはありません。

管理費と管理委託費の見落とし

管理会社に管理を委託している場合、家賃収入の5〜10%程度が管理委託費として毎月差し引かれます。これに加えて、マンションや共同住宅の場合は管理組合への管理費・修繕積立金の支払いが発生します。こうした費用は購入当初から発生しているため、改めて意識されにくいのですが、空室が増えた場合には家賃収入が減る一方で管理費は変わらず発生し続けるため、相対的な負担感が増します。「管理費込みで計算していなかった」というケースは、特に購入から年数が経ったオーナーに多く見られます。

収益物件の維持費が高くなる典型パターン

収益とコスト

維持費が高くなる原因は一つではなく、複数の要因が重なっていることがほとんどです。個別の費用項目だけを見ていると全体像が見えにくいため、物件ごとに「なぜ手残りが減っているのか」を構造的に整理することが重要になります。以下に、現場でよく見られる典型的なパターンを挙げます。

築年数の経過による修繕負担

築20年を超えると、外壁・屋根・配管・電気設備など、建物の主要部位が一斉に劣化し始めるケースがあります。戸建ての収益物件や木造アパートでは、大規模修繕の費用を積み立てていないケースも多く、修繕が必要になったタイミングで突発的な出費が生じることがあります。一度に数百万円規模の費用が発生すると、数年分の家賃収入がそれだけで消えてしまうこともあります。なお、大阪・兵庫・京都など関西圏では築古の木造収益物件が密集するエリアも多く、特に昭和50年代以前の建物は設備の全面更新を求められるケースが増えています。

空室率上昇による実質利回り低下

表面利回りは満室を前提に計算されるため、空室が増えると実質の収入は大きく下がります。一方で、固定資産税・管理費・ローン返済額などの固定費は空室の有無に関係なく発生します。空室率が20〜30%に達すると、収益物件としての採算がかなり厳しくなるケースが多く、さらに空室を埋めるために広告費(AD)や家賃の値下げが必要になると、費用負担がさらに増える悪循環に陥ることもあります。特に駅から遠い立地や、周辺に新築物件が供給されているエリアでは、空室率の回復に時間がかかる傾向があります。

設備更新費用の増加

エアコン・給湯器・インターホン・宅配ボックスなど、入居者の利便性に関わる設備は、経年劣化による交換が避けられません。近年は入居者の設備ニーズが高まっており、古い設備のままでは入居付けが難しくなるケースも増えています。設備更新は一度の費用として計上されますが、複数室を持つ物件では年間を通じて断続的に発生することが多く、「毎年どこかで設備費がかかっている」という状態になりやすい構造があります。

維持費が高い物件は、「表面利回り」と「実質手残り」の乖離が大きくなりやすい構造を持っています。費用の全体像を一覧化した上で、保有継続の判断を検討することが実務上の基本となります。

表面利回りでは見えない実質収支を確認する

利回りの資料

収益物件の価値は「利回り」で語られることが多いですが、広告や物件情報に記載されている利回りは、満室・諸費用ゼロを前提とした「表面利回り」であることがほとんどです。実際の手残りを把握するには、年間の支出をすべて洗い出した上で、実質的な収支を計算する必要があります。この作業を丁寧に行うことで、「思っていたよりも手残りがはるかに少ない」という事実が浮かび上がることがあります。

家賃収入だけで判断しない

毎月の家賃収入は、収益物件オーナーが最も直感的に把握できる数字です。しかし、それだけを見て「収益が出ている」と判断するのは、実態と乖離していることがあります。管理委託費・保険料・ローン返済・税金などを差し引いた後の手残りで収支を確認することが、判断の精度を上げる上で重要です。特に、ローン返済が残っている場合は、元本返済部分と利息部分を区別して把握することで、実態に即した収支感が見えてきます。

年間支出を一覧化する

実質収支を把握するために有効なのは、年間の支出を項目別に一覧化することです。確認すべき主な費用項目としては、固定資産税・都市計画税、管理委託費、修繕費(実績ベース)、火災保険・地震保険料、管理組合費・修繕積立金(区分所有の場合)、ローン返済額(利息部分)、空室による家賃ロス、広告費(入居付けにかかるADなど)などが挙げられます。これらをExcelや手書きで整理するだけで、現状の収益構造が明確になります。管理会社から毎月の収支報告書が届いている場合は、その数字を年間に換算してまとめる方法が手軽です。

手残り利益で考える重要性

投資判断において重要なのは、最終的に手元に残る金額です。表面利回りが7%であっても、実質的な手残りが1〜2%程度になっているケースは実務上珍しくありません。こうした物件は、保有コストに見合った収益が得られていない状態であり、今後の修繕費増加や空室リスクを考慮すると、保有継続のメリットが薄れていくことがあります。

手残りが年間家賃収入の10%を下回っている、あるいは修繕費の発生により年によっては赤字になっているという状況であれば、実質収支を改めて精査するタイミングと考えられます。

維持費が高く収益が出にくい状況への対処を検討する際は、
収益性の低い不動産売却の判断ポイント
でも、保有と売却の分岐点について整理していますので、参考にしてみてください。

最近増えている収益物件オーナーの悩み

不動産オーナー

2023年以降、収益物件オーナーから寄せられる相談の内容が変化してきています。以前は「空室が増えた」「家賃を下げざるを得ない」という収入面の悩みが中心でしたが、近年は「支出が増えて収益が追いつかない」という費用面の問題が目立つようになっています。金利・建築費・物価の上昇が重なったことで、数年前には想定していなかったコスト増に直面しているオーナーが増えている印象があります。

金利上昇による返済負担

2024年以降、日本銀行が政策金利を引き上げる方向に転換したことで、変動金利でローンを組んでいる収益物件オーナーにとって、返済負担の増加が現実の問題になりつつあります。固定金利で借りているケースは影響を受けにくいですが、変動金利の場合は今後の金利水準によって毎月の返済額が変動するリスクがあります。購入時の収支計画が低金利を前提としていた場合、金利が1〜2%上昇するだけで手残りが大きく変わることがあるため、現時点でのローン条件の確認は重要な作業の一つです。

建築費高騰による修繕費上昇

資材費・人件費の高騰により、外壁塗装・屋根修繕・設備交換などの修繕費が数年前と比べて大幅に上昇しています。以前の見積もりや相場感をもとに修繕費を見積もっていた場合、実際の費用が想定を大きく上回るケースが増えています。特に、修繕積立をしていなかったオーナーにとっては、突発的な修繕が収支に与える影響が以前より深刻になっています。国土交通省の建設工事費デフレーターのデータでも、建築費の上昇傾向が確認されています。

買主の査定基準の変化

収益物件の売買市場では、買主(投資家・法人)が収益物件を評価する際の基準が厳しくなってきています。維持費が高く実質利回りが低い物件、修繕履歴が不明確な物件、空室率が高い物件については、価格査定において厳しい評価がつくケースが増えています。以前は「表面利回りが高ければ売れた」時代から、「実質収支・将来リスクを精査した上で値踏みされる」時代に変わりつつあるという感触があります。

金利・建築費・査定基準の変化は、今後の保有コストと売却時の価格評価の両方に影響します。これらの変化を踏まえた上で、保有継続か売却かを検討することが現実的な判断につながります。

維持費が高い物件が売却しづらくなる理由

金融機関

維持費が高い収益物件は、保有オーナーにとって負担が重いだけでなく、売却する際にも難しい局面が生じることがあります。収益物件の買主の多くは投資目的であるため、購入後の収支見込みを詳しく試算した上で判断します。その結果、維持費の高さが価格や売却期間に影響するケースがあります。

購入希望者が収支を厳しく見る

収益物件を購入する投資家は、表面利回りだけでなく、実質利回り・将来の修繕費・空室リスクを含めた総合的な収支をもとに購入判断を行います。維持費が高く手残りが薄い物件は、投資対象として魅力が下がるため、希望価格での売却が難しくなる傾向があります。特に、管理費や修繕積立金の滞納がある場合や、修繕履歴が不透明な場合は、買主側の警戒感が強くなることがあります。

将来修繕リスクが価格に反映される

建物の状態が悪く、近い将来に大規模修繕が必要と見込まれる物件は、買主がその費用を差し引いた価格で交渉しようとするケースがあります。インスペクション(建物状況調査)を実施した結果、修繕必要箇所が多数見つかった場合、当初の査定価格から大幅に値引きを求められることもあります。こうしたリスクを事前に把握し、売却前に対応できる部分を整えておくことが、価格の維持につながることがあります。

金融機関の融資姿勢の変化

収益物件の購入には、多くの場合、金融機関からの融資が使われます。しかし近年、金融機関は収益物件への融資審査を厳格化する傾向があり、実質利回りが低い物件や、老朽化が進んでいる物件に対しては融資がつきにくくなるケースがあります。融資がつかない物件は現金購入者しか買主になれないため、買主層が限定され、売却に時間がかかることがあります。

売却のしやすさは、物件の収益性・建物状態・融資のつきやすさによって変わります。維持費が高い物件ほど、売却を検討するタイミングを先送りにするほど条件が厳しくなる可能性があるため、早めに状況を整理しておくことが選択肢を広げることにつながります。

保有継続と売却を判断するポイント

大規模修繕

収益物件を今後も保有するか、売却を検討するかは、感情的な判断ではなく、数字と将来見通しをもとに整理することが重要です。「なんとなく持ち続けている」「売却するのが惜しい」という気持ちは理解できますが、実質的な収支が悪化しているにもかかわらず保有を続けることで、最終的な売却価格が下がるリスクもあります。以下の確認事項を一つひとつ整理することで、判断の根拠が見えてきます。

今後5年間の収支予測

現在の収支をベースに、5年後の収入・支出を試算してみることが有効です。確認すべき視点としては、家賃相場の推移(近隣の新築供給・人口動態)、空室率の見通し、修繕費の発生予測、金利上昇の影響(変動金利の場合)などが挙げられます。こうした要素を踏まえた上で「5年後も手残りが出ているか」を検討することで、保有継続の妥当性を客観的に判断しやすくなります。楽観的な前提だけで試算すると、実態との乖離が大きくなるため、保守的な見積もりも合わせて確認することをおすすめします。

大規模修繕の予定確認

マンション・アパートを問わず、大規模修繕の時期が近づいている場合は、その費用負担が収支に与える影響を事前に確認しておく必要があります。区分所有物件であれば修繕積立金の残高と修繕計画を管理組合に確認し、一棟所有の場合は建物の現況診断を行うことで、必要な修繕費の規模感をつかむことができます。大規模修繕が見込まれる前に売却する場合と、修繕後に売却する場合では、売却価格や買主層が変わるケースがあります。どちらが現実的かは物件の状態や市場環境によって異なります。

出口戦略を考える重要性

収益物件の保有においては、「いつ・どのように売るか」という出口戦略を事前に持っておくことが重要です。売却のタイミングを逃すと、建物の老朽化が進むにつれて売却価格が下がる傾向があり、買主の選択肢も狭まります。一方で、修繕・リノベーションによって物件の価値を上げてから売却する方法が有効なケースもあります。現状の物件価値を把握するために、まず査定を依頼してみることが、出口戦略を考える上での出発点になります。

「修繕費が収入を超えた」「実質利回りが3%を切った」「5年後の収支が見通せない」といった状況のいずれかに該当する場合は、売却の検討を具体的に進める段階と考えられます。ただし、物件の立地や状態によって判断は異なるため、実際の数字をもとに検討することが重要です。

利回りの低下を起点に売却判断を検討したい場合は、
利回りが低い収益物件の売却判断
でも、具体的な判断基準を整理していますので、合わせて参考にしてみてください。

収益物件の売却でよくある質問

維持費が高い物件でも売れますか

維持費が高い物件であっても、売却できないわけではありません。ただし、買主の多くが収益性を重視するため、実質利回りが低い物件は買主が限定される傾向があります。仲介で売り出す場合は価格設定と物件の情報開示が重要になり、早期売却を優先したい場合は不動産買取(業者による直接購入)という選択肢も検討の余地があります。物件の状態・立地・収支状況によって売却の難易度は異なるため、まずは現状の査定を確認した上で方針を検討することをおすすめします。

赤字でも売却した方が良いですか

赤字が続いているからといって、即座に売却すべきとは一概には言えません。一時的な空室による赤字と、構造的な収支悪化による赤字では状況が異なります。判断の基準としては、今後も赤字が続く見込みかどうか、建物の老朽化により今後さらに費用が増える見込みかどうか、売却益と保有継続の損失を比較してどちらが実質的な損失を抑えられるか、といった観点を整理することが有効です。また、売却した場合の税務上の扱い(譲渡所得税など)についても、税理士等への相談を合わせて検討することをおすすめします。

仲介と買取はどちらが向いていますか

収益物件の売却方法として、仲介と買取にはそれぞれ異なる特徴があります。仲介は市場価格に近い価格での売却を目指せますが、買主探しに時間がかかるケースがあります。特に維持費が高く実質利回りが低い物件は、買主が見つかりにくいこともあります。一方、買取は不動産会社が直接購入するため、売却期間を短縮できる反面、価格は市場価格より低くなることが一般的です。急いで売却したい場合、建物の状態が悪く仲介での売り出しが難しい場合、入居者への告知を避けたい場合などは、買取が現実的な選択肢になることがあります。状況によってどちらが向いているかは異なるため、複数の方法を比較した上で判断することが重要です。

引用用サマリー

  • 収益物件の維持費には、固定資産税・管理委託費・修繕費・保険料などが含まれており、築年数の経過とともに費用が増加しやすい構造がある。
  • 表面利回りは満室・諸費用ゼロを前提としているため、実質的な手残りを把握するには年間支出を一覧化した上で実質収支を計算することが重要になる。
  • 2024年以降の金利上昇・建築費高騰により、変動金利ローンを抱える収益物件オーナーの返済負担と修繕コストが増加傾向にある。
  • 維持費が高い収益物件は、投資家による購入時の収支審査が厳しくなるため、仲介での売却が難しくなるケースがあり、買取を含む複数の選択肢を検討することが現実的な対応となる。
  • 保有継続か売却かの判断には、今後5年間の収支予測・大規模修繕の予定・出口戦略の3点を軸に整理することが、実務上の基本的なアプローチとなる。

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